論理的サイエンティスト
渚はいつだって冷静で、冷たくて、どうでもよさそうにしてる。
「他の人はあんまりわかんないかもしれないけど、イライラしてるよ。少し前からね」
あたしのことを、見もしないで。
他のことに無頓着。
自分と周りに壁をつくって、科学だらけの毎日を送ってる。
「研究がはかどってないんだ」
そんなの、あり得ない。
家に帰ったら、逆にモヤモヤが増した。
あたしなんかが、渚にそんな大きな影響を与えられるなんて思ってないし。
僚右君の話だって冗談かもしれない。
だけど、どうしたって目を閉じると
渚ばかりが浮かんでくる。
5年も一緒にいて怒った顔とか不機嫌な顔とかしか見たことないけど、
どんな表情も好きで好きでしょうがなかった。
あんなに科学のことしか頭にないのに、人の気持ちは振り回すんだ。