論理的サイエンティスト
あらためて自分で考えてみて、明らかにこれはないな、と思ったけれど。
「あ、あるに決まってんでしょ!」
退くに退けなくなってそんなことを口走った。
だけどあたしは思いっきり顔に出ていたらしい。
チラッと見ると、不敵な笑みを渚が浮かべていた。
「…なにっ」
なんか渚だけ余裕そうなのが悔しくなって、
口を尖らせてそう言う。
不敵な笑みも貴重だけど!
もっと優しくて柔らかい笑顔が見てみたかったのにっ。
「心配しなくても、君より手のかかる女はいない」
「……ムカつく」
だけどなんとなく、特別って言われてる気がしてちょっとだけ顔が熱を持った。
「君は煩くて頭が悪くて、呼べばいつでも来るし」
「……」
けなされてるし、と思って渚をこっそり見上げると
「だけど、……5年経っても手放せなかった、唯一の女」
銀色の瞳を優しく細めて、小さな笑顔を浮かべていた。