論理的サイエンティスト
謝ったついでに顔をあげると、黒髪をワックスでたてて遊ばせた、今時の男の子って感じの人だった。
目がくりくりしてる。
「いえ、あの!いつもここでコーヒー買ってる人ですよね?」
怖ず怖ずと聞いてくるその姿に、げっと思った。
そんなに目立つ行動してたつもりはないけれど、毎日買ってたら目立つのか!?
ここは頭のいい大学だから、全く関係のない自分が目立つのは少し……いや大分嫌だ。
「ご、ごめんなさい!」
とりあえず謝っておけば、男の子は思いっきり首を横に振った。
それこそちぎれそうなくらいで、必死な顔をして。
「あ、そういう意味じゃないんですっ。ちょっと、あの、気になってて。ここの生徒、じゃないですよね。事務の方とか?」
それを聞かれると困るから、あんまり目立ちたくなかったのに!
だけど、こんな優しげな好青年に聞かれて、黙って通り過ぎるわけにはいかない。
「えっと、この大学の……隣にある、ファーストフード店の社員、です…」
申し訳程度にそう答えれば、ちょっとびっくりした顔をされた。