論理的サイエンティスト
「あー、知り合いって、雨來先生ですか?」
え?
「すいません、科学室に入っていくところも見ました」
あはは、と苦笑を浮かべながら、右手で頭をかく。
そんなところまで見られてたんだ。
つられてあたしも苦笑した。
「そうです。渚とは、高校時代の知り合いで」
“知り合い”
その言い方は“知る”という字を使っているのに、どこか他人ぽい。
友達でも、恋人でもないみたいな。
だけど実際は、高校生のときに仲がよかったわけじゃないのだ。
ただあたしが、あの銀色の髪と整った顔つきで人目を引くアイツを見てただけ。
高校の卒業式で勢い余って告白して、
その返事がまさかの「うん」だっただけ。
たったそれだけの関係だから、こういうときになんて言ったらいいのか全然わかんない。
あの“うん”を、あたしは勝手に“OK”だと解釈したけれど。
無口すぎる渚はもっと別の意味で言ったのかもしれないって、5年経った今でも思ってしまう。