論理的サイエンティスト
「そう、ですか」
あたしの言葉に、少しだけ悲しそうな顔をした僚右君に首を傾げる。
その様子を見て僚右君はニッコリ笑って、携帯を取り出した。
「メアド教えてくれません?」
人懐っこそうな笑みに、あたしは当然のように自分の携帯を出す。
赤外線で送信しながら、コーヒーのことを思った。
この時期は真冬なわけじゃないから、
コーヒーが冷めることはあまりないけれど。
渚が好きなのは、熱い、できるだけ熱いコーヒー。
……機嫌悪くならないと、いいけど。
「ありがとうございます」
メールしますね、と笑う僚右君にはっとする。
こんないい子の前であんな男の、しかもただのコーヒーについて考えちゃうなんて。
なんて思いながらも、僚右君と別れて渚のいる科学室へと向かった。
すぐに、冷めてもいいからもう少し遅く行けば良かったと思うのだけれど。