Tears story〜人魚姫の涙〜
「シ・オ・ン・くんっ♪」
「…わぁああっ!」
「またサボりか?」
素っ頓狂な悲鳴を挙げた俺に、耳元で囁いたヤツが一人。
派手にオーバーリアクションして尻もちついた俺はそいつの名前を叫んだ。
「…ゼン! 驚かすなっ!」
「別にいーじゃん。シオンからかうの楽しいしなー?」
「最悪」
つか、人としてどうなんだ。
睨む俺を軽快に笑って返す、同い年の男。
小さな頃から今に至るまで、村の子供の中では仲のよかった幼なじみ。
――ゼンテイカ・オブコニナ。
本人たっての希望で、誰も「ゼン」と呼ばせてるのが通例な俺の幼なじみだ。
「んでぇ、シオンくんはサボりでちゅか〜?」
ムカッ。
とりあえずだんまり決めとこう。
反論するだけ疲れるし。