Tears story〜人魚姫の涙〜
つんつん。
「っおーい、シオンくーん?」
…………。
「聞いてるでちゅか〜?」
だからなんで赤ちゃん言葉なんだっつーの。
その時だった。
「………ゼン」
ゼンの背後、潜む影に気付いた俺は幼なじみの名を呼ぶ。
ゼンは当然俺と向き合う形で、背後にあるモノに気づくはずもなく。
「なんでちゅか〜?」
「巻き添え喰らうから」
「なんじゃそりゃ?」
俺の言葉をわけがわからないと言わんばかりに、ゼンは首を傾げた。
……。
女の子なら可愛いと思われる仕草だろうけど、生憎ゼンは男。
男にそれやられたって、気色悪いに決まってる!
「…ど」
とりあえずどいて下さい、と言おうとしたんだけども。
その言葉は呆気なく消えたのだった。