Tears story〜人魚姫の涙〜
………ガラガラガッシャン!!
「…っ!」
って〜…!
と声にならない悲鳴をあげるはめになったその原因に。
左肩の激痛を右手で押さえながら、俺はその影を見上げた。
ちなみに激痛の元はゼンの顎が肩にヒットしたから。
「なーにがでちゅか、よ! 17にもなって気色悪いのよ、ゼン!!」
「ア、アリネ…」
白い袋を持って現れた女の子。
俺のもう一人の幼なじみ、アリネ・エラチオール。
村に在住する男に人気があるくらいらしい(ゼンテイカ談)から、可愛らしい女の子だろうとは思うけど。
「………」
今日はそんな髪型なのか。
彼女の髪型に気付いて、心の内でそう思う。
アリネはことさら自分の髪を大事にしていて、日に日によって、髪型を変えている。
髪を編んだり、上の方で束ねてみたり。
女らしい長い髪を下ろしてみたり。
今日はそんな髪型で、こめかみにかかる髪を後ろに避けて、バレッタでとめてる。
――…セラディが何より誇る、精巧な細工の施されたバレッタを。