Tears story〜人魚姫の涙〜

***


「………」


肩にかつがれ、歩き出してから。
暴れていたアリネは諦めたのか、すっかりおとなしくされるがままだった。




「!」


だけど気付くんだ。

彼女から感じる、いつも以上に熱い温もりを。

熱くなってる耳を。





頬を。



「…………」


ぎゅっ。



首元を細い腕で抱きしめて、小刻みに震える、小さなカラダを。


「…シ…オン」






切なく、俺の名を呼ぶその声を。
< 29 / 51 >

この作品をシェア

pagetop