Tears story〜人魚姫の涙〜
「だっておばさま、ゼンの事になると、いつもすごいんだもの」
「あはは。ゼンに対しちゃ、相当過保護だもんな」
本人は嫌そうにするけど。
「村で数少ない医者の一人息子だけあって、ことさら大事にされてるもんな」
俺と違って。
一瞬遠い目をした俺を、アリネは心配そうに、表情を歪めた。
「…大丈夫だよ。いつもありがとな、アリネ」
彼女は知ってるから。
一番近くに、ゼンよりも傍にいる。
――傍にいてくれる。
たった一人の、俺のこと。