Garden3
雨
水音が続く。
咽せるような土の匂い…
剥がれるカサブタ。
鉄の味…
ぼんやりとした記憶があたしを包んでる。
さらさらした黒い髪。
透けるような白い肌。
髪を梳く細い指先…
どこかで。
あたしが混線してる。
大きな水玉の傘。
2人で差して、触れた冷たい手。
並んだ背丈は、そんなに変わらない。
白いカーディガンから柔らかい匂い。
古い記憶?
いいえ。
そんなものは初めからなかったの。
どこにもいない、曖昧な記憶。
あたしを見つめる鋭い視線。
違うわ。
あなたのことは忘れてしまったの。
もうあたしを呼ばないで。
水音が続く。
咽せるような、鉄の匂い…