─ Alice ?─
心臓が跳ねる。
この香り この声
独占的な台詞
狂気にまみれた
《 紅 》い瞳。
「…シロウサギ、さん……。」
『フフッ……フフフフ♪
お待ちして
いたのですよ??
私の ア リ ス 。
あなたがここに
来ることは分かって
いましたから…。
さあ、アリス…
こちらへ…。』
嬉しそうに話出す
シロウサギさんに
以前の恐怖が蘇る。
ーー逃げなきゃ。
しかし私の腰に
腕を回し、がっちりと
固定している為
身動きが取れない。
『アリス……。
聞いていますか??』
私の顔を覗きこむ。
ふわっとシロウサギさんの
甘い蜜の香りがした。
『……アリス。
あなたは
私の《 モノ 》だと
お教えした筈です。
なのに……何故、
何故…、あなたから
薔薇の香りが
するのですか??』
──薔薇の香り。
薔薇のトンネルを
潜ってきたのだ。
薔薇の香りがするのは
当たり前だろう。
しかし、
シロウサギさんの言う
《 薔薇の香り 》が
それを
意味していないことは
彼の瞳に宿る怒りで
嫌なほど理解できた。
『あなたからする腹を
抉(エグ)られるような
不快な香り…
帽子屋、私のアリスに
なんてことを……!!』
わなわなと肩を震わせ
私を強く抱きしめる。
「痛いッ!!
痛いよシロウサギさん!!」
私の叫びも虚しく、
力は強まるばかり。
『アリスは私の
《 モノ 》なのです!!
決して誰にも
渡しはしない!!
アリス、私に アイ を
誓うのです!!!』