─ Alice ?─
***
「随分とご機嫌ですね。」
「アリスに会ったんだ。」
薔薇を抱えた
眠りネズミは嬉しそうに
屋敷に戻ってきた。
「それに…」
ニターっと笑みを浮かべ
思い出しているのか
声を殺し笑いだした。
「あの馬鹿猫…
《 導 き 》すら
できなくなってやがる。
シロウサギに
まんまと乗せられて…
いや、白兎かな?
ま、どっちにしろ
時間の問題だよ。
アリスはきっと
ここに戻ってくるよ。」
楽しみだな、と
呑気に欠伸をしながら
私に寄りかかる。
そうか
《 導 く 》 ことが…─
うとうとなり始めた
眠りネズミを抱え
私は物思いに耽る。
着実に 時 は
狂い出した。
シロウサギ
ディーとダム
私
それに…─
アリス…
あなたにこの
狂った世界を
止められますか ?─
「良い香りですね。」
薔薇を摘み
鼻に近づける。
「ムニャ...良い、匂ひ..。」
寝言のような
譫言(ウワゴト)を
唱えながら
眠りネズミは目を閉じる。
「ええ、良い香りです。
狂い かけた
この 香りが
タ マ ラ ナ イ ..。」