─ Alice ?─




─守れない。



その言葉だけが
頭をかけ巡る。



どうして…
どうしてなの?チェシャ猫..



「アリス..俺はもう
お前を守れない。

いや、守る資格がない。



俺はアリスの
《 忠実な猫 》だから。


それに…─」






──アリス、
俺はお前のことが…──




「私を、独りにするの…?」

不安が過ぎる。
チェシャ猫だけは、
私の傍にいてくれると
思っていた。


なのに…



「違う!!!
独りにするんじゃ
ないんだ…
違うんだ、アリス…。」

「もういい!!!
チェシャ猫の馬鹿!!!
大嫌い!!!」




《 大嫌い 》。




思わず発してしまった。



嫌いなんて思って
いるはずないのに。



恐る恐る
チェシャ猫の顔を見る。



「……俺のことなんか
嫌いになった方が
いいのかもな…。」


フッと悲しそうに笑い、
私の横を通り過ぎる。




何もいわず



振り向きもせず





消えていく。



深い深い森の闇に
紫色が溶けていく。
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