─ Alice ?─
***


ゼーハーゼーハー



「つ、疲れた…。」


思わず絶叫しながら
全力疾走したのはいいけど



「……迷った、よね?」



ハハ、迷った。


「って………


誰かあぁああ!!!」




カアァァァ…



嗚呼、虚しいだけ。



ぼそぼそ呟きながら
歩いていると、
鼻に届く良い香り。



この鼻腔を擽る
甘い香り…




「帽子屋、さん ?」



でもここは
誰もいない森の中。



帽子屋さんが
いるはずない。のに



この香りは間違いなく
帽子屋さん。



匂いに導かれるように
私の足は自然に歩き出す。


手招きされるかのように



体が自然に 向かっていく。





「薔薇、薔薇、
薔薇の香り………あ。」





トンッと
軽くぶつかった相手を見ると


やはりそこにいたのは







「お帰りなさいアリス。」


素敵に微笑む
薔薇 の 貴公子こと
帽子屋さんだった。
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