─ Alice ?─
「あ、……帽子屋さん。
どうしてここに?」
「?
何を言っているのです、アリス。
周りをよく見てください。」
そういわれ周りを見渡すと、
そこは以前も来た
帽子屋屋敷であった。
「あれ、なんで?
私森で迷ってたはずなのに…」
たしかに薔薇の香りに
つられたのは確かだが、
こんな短時間で
辿り着ける筈がない。
ウーンと唸る私なんて
お構いなしに帽子屋さんは
優雅に紅茶を啜る。
「アリス、
世の中には知らない方が
幸せなこともあるのですよ。」
黒いことを爽やかに
いいのける
帽子屋さんに若干恐怖を
抱いた瞬間だった。
帽子屋さんって
よく分からない人…
ハア、と溜め息を尽き
取りあえず席に着く。
「人参ティーでいいですか?」
「あ、はい…って、人参!?」
人参だけはどうしても駄目!!
あのオレンジ色の物体を
口に入れるなんて…
「駄目駄目駄目駄目!!
すみませんごめんなさい!!」
思わず逃げだそうと
席を立つが、
帽子屋さんにニコリと
微笑んだまま
手首を掴まれていた。
「…私の紅茶が、
飲めない、と…??」
ヒィイイ!
黒い!!笑顔がドス黒い!!
「……飲みます飲ませて下さい。」
嗚呼、最悪だ。