─ Alice ?─


目の前には
オレンジ色の液体の入ったティーカップ。
繊細な絵柄が貴族を
思わせる高級品である。



「……わあ、おいしそ…う。」



アハハ、と乾いた笑顔で
カップを見る。



無理だ…私には
無理難題だよ…。



「ぼ、帽子屋さん!
あのッ…!」


こればかりは
どうしようもない。
帽子屋さんにお願いしようと
勢いよく振り向くと、
何故か目の前には
綺麗なアメジストの瞳があった。




「どぅわッッ!?!?
帽子屋さ「飲めないのなら、
飲ませて
差し上げますよ? アリス。」」



クイッと顎を掴み
自らの口に紅茶を含ませ
私に口付けをする。



口の中に広がる
温かい液体。
人参の香りに紛れて
薔薇の仄かな甘みがした。


「……飲めましたね。」


「の、飲めましたねって…
これって口、移し…!?」



カアァア


顔に熱が集まる。
口移しって…
今時恋人同士でも
しないようなことを…


「アリス?どうしましたか?
紅茶のお代わりですか?

それとも、

もっと、欲しい、と ?」



変態帽子屋降臨




きっ危険!!!
ここにいたらまた
この前みたいに
危ない目にあう!!


逃げようと駆け出すと、
意外にアッサリと
見逃してくれた。



あれ ?でも……




素晴らしいほどの
笑顔を向けている
帽子屋さんに不信感を抱き、
思わず止まる。


「アリスは本当に
元気ですね。

でも、体力は残しておいた方が
いいですよ ?

やめてと言っても
止めませんからね。」



言い終わると共に
帽子屋さんの姿が一瞬で消え、
次の瞬間




「あなたの全てを

頂きます、よ 。」





後ろからキツく
抱き締められていた。
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