─ Alice ?─
私にも流れている赤い液体
「それって…血、ですよね。」
ゴクリ、と喉が鳴る。
薔薇の色が、血の色?
それって……
「誰、の血…なの?」
聞かなければよかった。
しかしもう遅かった。
私の質問を聞いた瞬間、
帽子屋さんの顔が
妖しく笑ったのを
見逃さなかった。
「見せて差し上げましょうか?
薔薇が赤く染まり、
そして《 紅 》い薔薇に
変わる姿を。」
そういった刹那、
自らの手首にナイフを当て、
スッと横に引く。
「帽子屋さん!!」
手首を伝い、
地面へ落ちる血の滴。
すると
血を求めるかのように
薔薇の蔓(ツル)が
集まりだす。
ゴク ゴク
ジュル ジュル
「な、なな…なに、これ。」
目の前の蔓はまるで
生きているかのように
血を啜り、
その先の薔薇は
みるみるうちに
赤く染まっていく。
「とっておきを
お見せ致しましょう。」
帽子屋さんは
妖しく笑いながら
奥へと進む。
そして
ズルリ、と
何かを引きづりながら
こちらに向かう
何かを 引きづり
なに、 あ れ 。
生き物 ? いや、違う。
あれは生き物
なんかじゃない。
あれは
《 生きていた物。 》