─ Alice ?─
薔薇はみるみるうちに
《 紅 》く染まる。
そして、
喰らわれたそれは
骨すら残らず消え去っていた。
「これが薔薇の真実ですよ。」
染まりたての薔薇を
一輪摘み、
私の髪に飾り挿す。
「アリスは
やはり薔薇が似合います。
残酷で、美しい
《 紅 》い薔薇が。」
何も言えなかった。
言えるはずがない。
目の前の惨劇をただ
黙ってみることしか
出来なかったのだ。
それに
目を閉じれば
先程の光景が蘇る。
私を
笑いながら見ていたあの、
人だったものが……
「ウ、ェ……!!」
込み上げてくるものを
我慢できず
その場に崩れ落ちる。
そんな光景を
帽子屋さんが楽しそうに
微笑みながら見ていたことなど
私が知る筈はなかった。