─ Alice ?─



辿り着いた先は
料理場だった。


薄灯りが灯され、
包丁や鍋が鈍く光る。



少し先には大きな釜戸があり、
炎に照らされ、
影が揺らいだのが見えた。


「………アリスか。」



影の正体は一人の女性。
薄明かりの為、
はっきりは見えないが、
美人だということは分かる。


「メアリ・アン……
お、願い…私、私を……!!」


メアリ・アンと呼ばれた女は
目だけでアリスを確認し、

こっち、と手招きする。



「私、が死んだ、ら…
帽子屋、悲しむかな…?」


切なげに言う少女は
クスリ、と笑い



大きな釜戸の煮えたぎる鍋に
飛び込んだ。



「いや゙ぁああ゙ああづいあづいいぃいああ゙ぁあづぃいいあああ゙ぁぁぁあづいぃい゙やああ゙ぁあああっあづいい゙やっあっ!!帽子屋あああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」





少女の
悲痛な叫びが響き渡る。


目の前の惨劇に私は
ただ吐き気を抑えるだけで
精一杯だった。
< 139 / 397 >

この作品をシェア

pagetop