─ Alice ?─
「アリス、無駄なことは
お止めなさい。」
表情を一切変えずに
帽子屋さんは言い、
煮えたぎる鍋から
少女を引きづり出す。
が、
少女の姿は先程までの
可愛らしい姿とは打って変わり、
服はボロボロ、
皮膚は焼き爛(タダ)れ、
表情は分からなくなっていた。
そう、この姿は
私が薔薇園で見た
あの《生きていた物》
そのものだった。
── これが あなたの
一代前 の ア リ ス の
記 憶 ですよ…──
クスリ、と帽子屋さんの
笑い声がし、
急激な眠気に襲われた。