─ Alice ?─
「アリス……」
耳元で聞こえる
帽子屋さんの甘い声。
あれ、まだ夢の中…?
「う…んー…、ん?」
目を開ければ
目の前には綺麗なアメジストの瞳。
夢、じゃない。
「ち、近い!!きゃー!!」
意外と乙女チックな声が
出た自分に感動。
「お目覚めですか?アリス…、
良い夢は見れましたか?」
クスリ、と笑う帽子屋さんは
いつもの紳士な
帽子屋さんである。
「夢…
やっぱり只の夢、なのよね?」
あまりに残酷な、夢。
それに、リアル過ぎた。
「ここの薔薇たちが、
あなたにどうしても
見せたい、と言うもので。」
"薔薇たち"
その言葉は、
夢を見た後の私には
嫌な程理解できた。
「その薔薇って
前代の" アリス "のこと?」
私がそう言った刹那、
帽子屋さんが妖しく笑った。
「少し違いますね。
前代の ア リ ス 、
ではなく
前代の ア リ ス たち、
ですよ? ア リ ス 。」