─ Alice ?─
アリスたち…
ああ、そうか。
前代だけでなく、それ以前にも
アリスと呼ばれた人は何人も
いたということか。
そして、そのアリスたちが
どうなったのか、
嫌でも理解できた。
「……どうして、
あんな残酷な夢を見せたの?」
見たくなかった。
そうすれば、
帽子屋さんの冷酷な姿を
知らなくて済んだのに。
グッ、と唇を噛み
帽子屋さんの返事を待つ。
すると、
遠くを見ながら言葉を
紡ぎ出した。
「アリス…私はアリスをアイシテいます。
それはこの国の住人なら
当たり前のこと。
皆がアリスを欲し、
アリスを奪い合う。
そして、アリスにアイシテもらえた、
ただ一人の者にだけ
"力"が与えられる。
前代のアリスは……
白兎を選びました。
私のことを
アイシテくれていたのに、
白兎をアイシテイルと…
だから私は思ったのです。
手に入らないのであれば
無理矢理手に入れれば良い、と。
それが例え、
原型を留めていない、栄養液と
抜け殻と化していても…ね。」