─ Alice ?─
「嫌ッ!!離して!!」
蔓を振り払おうと
必死に抵抗するも、
蔓は余計に私を締め付け、
帽子屋さんは
私をキツく抱き締める。
「さあ、アリス。
私を、求めなさい。」
グイ、と無理矢理
顔を自分に向け、
荒く口付ける。
「ん!?!?やッ……んぁ!?」
急に絡み付いていた蔓と
帽子屋さんが離れ、
バランスが崩れる。
倒れる……!!
ギュッと目を瞑り、
衝撃に身構えるが、
いつまでたっても
衝撃は来なかった。
その代わり、
全身に走る肌に
突き刺さるような痛み。
「痛ッ……!
って…薔薇、の棘…ひゃっ!!」
バランスを崩し、倒れた先は
《 紅 》い薔薇たちの上。
全身に棘が突き刺さる。
そのうえ、
帽子屋さんが私に覆い被さり、
さらに棘が深く刺さる。
「痛い!!
痛、い…やめ…て…。」
あまりの痛さに涙が浮かぶ。
帽子屋さんにも
棘が刺さり、血が滴る。
しかし、
そんなこと気にする様子もなく
私をキツく抱き締め、
耳元で囁く。
「美しい…美しいです、アリス。
貴女の拒絶する声、
抵抗するその体…、
涙は私の心を揺るがし誘い、
滴る雫は薔薇たちを染める。
嗚呼、アリス。
貴女の"力"で私を…」
ピタッと帽子屋さんの
動きが止まる。
まるで
時が止まったかのように
微動だにしない。
「どうなっているの…?」