─ Alice ?─



【守る】


その言葉に
妙に心臓が脈打った。


「守って、くれる…の?」


言葉が震える。


「ええ、
私は貴女を御守りしたい。」



「連れて行って?」



もう、
こんな思いしたくない。

こんな危険でこんなに
辛い思いしたくない。

それに




皆が狂っていく様を
見ていられない。


私のせいで
皆が可笑しくなっていき


私のせいで
皆が血を流している。



そんな姿


もう、ミ タ ク ナ イ 。




「 ア 、 リ ス ……。」


ビクッ




帽子屋、さん…?


「時間切れのようだ。
さあアリス、急ごう。
帽子屋が動き出す前に。」



そう言うと、
私を抱き上げ、
足早に場を去った。





振り向くと、
薔薇の中から帽子屋さんが
此方を睨み付けていた。


美しくも残酷な
《 紅 》い薔薇園を
やっと私は脱出した。
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