─ Alice ?─
なんか、この台詞
この国に来てから
よく耳にするなあ…
正直困惑してしまう。
アイシテイル、なんて
簡単に言えないし、
今の私にはそんな人いない。
「んー…いないと思うわ。
チェシャ猫や帽子屋さん、
ハートエースやキング、
みんな好きだけど……
アイシテイナイ、わね。」
暫くの沈黙。
すると、
キングが先に沈黙を破り
話しだした。
「俺達、
つまりこの国、この世界の
住人は皆アリスを愛し、
欲する。
それは必然の理であり、
誰も否定など
してはいけない。」
以前チェシャ猫や帽子屋さんも
言っていた。
皆が私を求める、と。
でも、今何故この話を…?
「俺達住人が
否定してはいけないように、
アリスも俺達を
否定してはいけない。」
静かな空気が流れる。
だが、私の胸は
今までにないほど
暴れ、脈打っていた。
「アリス、
君は誰もアイシテイナイ、と
言った。
その言葉は
この国では禁句(タブー)だ。」
スッと私から離れ、
窓際へ行き外を見る。
「アリス、
試練の時が近い。
一つだけ、
この国の【キング】として、
言っておく。」
此方を向くキングの顔は、
何か思い詰めたような、
切ないような
複雑な表情をしていた。
「時が来たら、
今、必要としている力が
ある者を選べ。」