─ Alice ?─
『じゃあ僕は行くよ。
チェシャ、精々道案内頑張って。』
ニコリと笑い、
歩き去っていく。
最後の言葉、
嫌みなんだろうな…
チェシャ猫の口が引きつってるし。
「…あの糞兎。
絶対いつかぶっ殺してやる。」
はは、予想的中。
「それよりチェシャ猫…
あの、今まで一体…?」
「……森。」
………。
「い、いや、
そうじゃなくて…」
「森にいた。」
………。
ひ、久しぶりだからかな?
「あのー
私が知りたいのは一体何を
していたのか、ってこと
なんですけど…。」
「……ま、色々だな。」
色々って何ーーーー!!!
「チェシャ猫!!!わ、私本気で
聞いてるんだからっ!!
ちゃんと答えなさい!!
貴方は私の
【 忠実な猫 】なんでしょ?」
思わず命令口調。
すると、何故かチェシャ猫が
目を見開いて私を見ていた。
しかし、
すぐにいつものチェシャ猫に戻り、
悲しそうに笑った。
「な、何…?」
「……アリスがそれを望むのなら。
俺は全てに答えよう。」
まるで決まった台詞のように
淡々と述べるチェシャ猫に
違和感を感じた。
何よこれ…
まるで女王と兎の関係みたい
「どうしてそんなこと言うの?」
「俺はアリスの【 忠実な猫 】だ。
アリスがそれを望むのであれば
答えなければいけない。」
感情なんて無い。
ただ淡々と説明をするチェシャ猫は
まるで人形のようだった。
そして
「どうしてそんなに
悲しい顔をするの?」
暗紫色の瞳が
悲しく揺らいでいた
「悲しい?
…そんな訳ない。
俺はアリスの【 忠実な猫 】。
アリスを愛し
アリスに尽くす
それだけで俺は…
俺は…
充分なんだ。満足なんだ。
アリスの猫でいられる。
それだけでも
充分すぎるんだ。」