─ Alice ?─
自分に言い聞かせるように
何度も呟く。
十分だ、満足だ、
何も望んでいない。
だが、チェシャ猫の瞳は
これまでにないほど揺れていた。
明らかに様子が可笑しい。
「……チェシャ猫。貴方は私の【 忠実な猫 】なのよね?」
「ああ。」
「私の問いにはすべて、答えるのよね…?」
「…ああ。アリスが望むのなら。」
聞かせて
貴方の悲しみの訳を
「…何故、
そんなに悲しい瞳で
私を見るの?」
何かに怯え、
何かを抑え、
体から溢れ出す悲しみの色
「悲しい…?
そんなわけな「答えなさい、
チェシャ猫。私の質問よ…?」」
こう言えばチェシャ猫は
答えてくれるはず…
普段言わない強い台詞に
少々上擦る。
緊張しながらチェシャ猫を見ると
私の瞳を見据え、
首に付けているチョーカーを
握り締めていた。
「………アリスが、
それを、
望むのならば。」
フッ、と軽く笑い首のチョーカーを
千切り捨てる。
その刹那、
とてつもない光が
私達を包んだ。