─ Alice ?─
肩から女の子を降ろし
諭すかのように語りだす。
「いいかアリス?今からお前は
俺の【 モノ 】だ。
俺以外の住人に
近づいては駄目だ。
触れるな、話すな、
そして…
俺に逆らうな。いいな?」
人が変わったかのように
異常な束縛をしだすチェシャ猫。
女の子はよく
理解していないのだろう
ただ大人しく頷いている。
「良い子だ、アリス。
…そうだ、約束事決めよう。
俺に逆らわず言うことを
聞いたら、
アリスに御褒美やるよ。」
─御褒美。
その言葉にも妙に
心当たりがあった。
「ほんと?
じゃあありす良い子する!!
ちぇしゃ猫の言うこと
ちゃんと聞く!!」
チェシャ猫に飛びつきながら
女の子は言う。
「可愛いな、アリス。
お前は俺のだ…そう、
俺だけの ア リ ス 。
お前を誰にも触れさせたくない。
誰にも声を聞かせたくない。
誰にも、お前の存在を
知られたく、ない…。」
─ オ レ ダ ケ ノ
ア リ ス 。
「アリス…アリス…。
俺にだけ触れて!!
俺にだけ微笑んで!!
俺に…俺、だけに…
お前の姿を…。
俺だけがお前を見れたら…?
ハハ、ハハハハ!!!!
そうだ…簡単だ。
俺だけがアリスに会えれば
いいんだ。
ならアリスの居場所は俺だけが
知ってればいい…
アリスが、どこにも
行けなくなれば…?
俺だけしか、アリスに会えない。」
身震いがした。
これが、チェシャ猫。
私の知らない、チェシャ猫。
欲望のまま、アリスを欲し
欲望のまま、言葉を発する。
これが住人。
これが真実。
「やだ…やだよ、ちぇしゃ…
やだ止めて、やめっ………
ちぇしゃ猫お!!!」
ズプッ
女の子の足に爪が突き刺さる
鋭い、鋭い、猫の爪が。
幼い幼い女の子の足に
深く、食い込まれていく。