─ Alice ?─



「アリス、俺のアリス。


その体、その声、

その涙、その鮮血…


全てが愛おしいんだ。


全てが欲しいんだ。



……まだアリスには
わからないかもな。」


フッと笑い血を舐めとる姿は
獣でしかない。


女の子はただただ泣きながら
チェシャ猫を見ていた。


「アリス…お前が俺の言葉を
理解できるぐらい成長したら、
迎えにいくから。


だから………忘れないで。」



" 忘れないで "



忘れたかった。
だけど思い出してしまった。


私、チェシャ猫と会ったことがある。

会っただけじゃない

会話して 笑いあって


好きになって。


だけど本当のチェシャ猫を
目の当たりにして


怖くなった。


「アリス…早く大人になってくれ。
早く、早く…






俺たちを、─」


言葉の途中、
光が辺りを包み込む。


意識が遠退いていく中
微かにチェシャ猫の声が聞こえた

「助けて。」と


女の子に、ではなく
私に向かいチェシャ猫は言った。



確かに此方を見て、
そう言った。


「思い出したか?アリス。」




ふと声の主を見ると、
チェシャ猫がいた。



記憶のチェシャ猫ではなく

現実のチェシャ猫。



「…俺は昔、アリスを傷付けた。

愛しすぎて、愛しすぎて、
仕方なかったんだ。


俺だけのアリスにしたかった。

俺だけをみていてほしかった。


だけど成長したアリスと再会して
気が付いたんだ。

アリスは俺だけの【 モノ 】
じゃないんだ、って。」
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