─ Alice ?─
チェシャ猫はゆっくりと、
落ち着いた口調で話し出す。
昔の自分を
思い出しているかのように
「アリス、俺は悲しみを
捨てたつもりだった。
お前を守り、導く、
それだけでよかったんだ…
でも違った。」
"違った"
その言葉の意味が
嫌なくらい理解できた
「…足りないんだ。」
ジリジリと私との距離を
詰めてくる。
瞳は私をしっかりと捕らえ、
逃がしてくれない。
「守ることが、
出来なくなった…
導くことすら、
出来なくなった…
アリスをアイシテしまったから……
アリス、俺も
シロウサギや帽子屋と同じなんだ
俺は
俺は
ア リ ス 、お 前 を
殺 し た い ほど
ア イ シ テ しまった。」