─ Alice ?─
助けたかった。
せめてチェシャ猫だけでも
元に戻してあげたかった。
私、チェシャ猫が─
「最高だよ、アリス。
お前の柔らかな肉に
牙が食い込むこの感触…
溢れ出す鮮やかな血液…
そしてお前の
苦痛の表情、悲鳴……
嗚呼、綺麗だ…
綺麗だよ、俺の ア リ ス 。」
もはや手遅れ。
以前のチェシャ猫なんて面影もない。
ただ狂ったように私を求め
快楽に溺れているだけ。
「チェシャ猫……。」
抵抗はしない。無駄だから。
それに
他の住人に殺されるくらいなら
チェシャ猫に殺されたほうがいい。
そう思い目を閉じたとき
チリン
少し離れたところに
チェシャ猫の首に付いていた
チョーカーが落ちていた。
チリン チリン
風もないのに
何故か鈴だけが鳴る。
そしてその度、
チェシャ猫がピク、と反応する。
鈴を恐れているように。
チリン チリン
チリン チリン
「やめろ!!!!!煩い!!!
アリスは俺のだ!!!」
鈴を壊そうと飛びかかる。
その時だった。
─アリス、お逃げ。─
「えっ!?」
誰だか分からない、
けれど以前、ハートエースと
いた時にも耳にした、
女性の声。
凛とした、
まるで女王様のような…─
─アリス、お逃げ。
妾のところへ来るがよい。─