─ Alice ?─



気がつけば走っていた。


行き先も分からずただ、ただ


何かに惹きつけられるように



ただ、走っていた。



「はっ…はあっ…あっ…」


ピタリと足が止まる。


まるで最初から目的地が
ここであるように



「って…リス!!!!

待って……アリス!!」




後ろからは鈴から逃れながら
チェシャ猫が追ってきていた。


私を求め…


いや、きっと
【 アリス 】を求めて。


もし、私が【 アリス 】じゃ
なかったら、チェシャ猫は私を
好きになんてなっていないだろう。


いや、なるわけ無い。






「……チェシャ猫。」


思わず零れ落ちる言葉。

また冗談言って、
馬鹿みたいにムキになってよ

また蝶々見ながら
尻尾揺らして可愛い姿見せてよ


また、私のこと守ってよ


もう、私の味方ではないの?


もう、チェシャ猫は…─




─ 可哀想なアリス。 ─



また声がする。

私を宥めるような穏やかな声



─ 可哀想なアリス。

妾が全てを教えてあげよう。


知りたいのだろう?


自分のすべきこと

皆を元に戻す方法


妾が教えてあげよう。─
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