─ Alice ?─
後ろを振り向くと、
そこには妖艶な笑みの帽子屋さん。
「アリス。どうして私から逃げたのですか?
怖がることなんてないのですよ?
私は、ただ、貴女をアイシテイルだけ…
さあ、屋敷へ戻りましょう?」
足が動かない。
震えが止まらない。
以前の恐怖が蘇る。
「い、嫌…戻らない…
戻りたくない!!」
渾身の力を振り絞り
走り出そうとするが、
ディー&ダムが乱闘をしている為、
後ろは通れない。
目の前は帽子屋さん。
通れるわけがない。
周りは森、道などない。
私に、逃げ道なんて、ない。
「アリス。無駄な思考は捨てなさい…
私から二度も逃げられると
思っているのですか?」
クスクス、と笑う帽子屋さんの目は
笑ってなどいない。
ただ、私の瞳の奥を、
逃さないように見据えていた。
後ろのディー&ダムのことなんて
気にも止めていない。
「わ、わかったわ…
帽子屋さんについていく…
そのかわり、ディー&ダムを止めて!
私のせいで、殺し合いなんて
してほしくない!!」
あんなに仲良しの二人が
私のせいで…─
考えるだけで胸が痛い。
「アリスがお望みなら。」
ニコリ、と笑い二人に近づく。
これで争いが終わる…
ほっと胸を撫で下ろした
瞬間
「邪魔ですよ。ディー、ダム…
貴方たちがいるとアリスが
私の下へ来れない。」
血 が噴き出す。
「ヴあぁあーーーぁ!!!!」
信じられない光景が
「や、やめて帽子屋ぁぁあ!!」
目の前に広がっていた。
「おやすみなさい、ディー、ダム。
素敵な【 紅 】に染めてくださいね?」