─ Alice ?─
…
「帽子屋、アリスを…はなし、て…」
ディーが消え入りそうな声で言う。
「僕、の…僕らの、アリスを…!」
ダムが息を荒げながら言う。
「くだらないですね、ディー、ダム。
アリスは私の【 モノ 】です。
貴方たちがどんなに抵抗し、
刃向かってきたところで
何も変わりませんよ?」
思わず口元が緩む。
「かえし、て…返してよ…」
「アリスお姉さん…お姉さ…」
「煩いのは嫌いです。」
ニコリ、と笑い、二人に蔓が絡みつく。
ヴあぁあぁぁあああ!!!!!
悲痛な叫びが森中に響き渡る。
あっという間に二人の姿は蔓で覆い隠されてしまっていた。
そして薄紅の薔薇が一輪、
私を見上げるように咲いた。
まだまだ未熟な、薄紅の薔薇。
「赤くさえならないなんて
なんて未熟な…
嗚呼、早く、
早く鮮やかな【 紅 】が欲しい…
誰もが見惚れる美しい薔薇が…」
ふ、と腕の中に目をやり
アリスを見る。
誰もがアイスル 愛しのアリス
誰もが欲しがる 愛しのアリス
今まさに、腕の中に
欲していた【 モノ 】がある。
皆が求める。
皆に羨まれる。
そして何よりも
「まさか私がこれほど
求めてしまうなんて。
アリス、貴女は不思議な方だ。」
私は貴女を愛してしまいました。
…