─ Alice ?─
「はあ、あぁ…はあっ」
呼吸が乱れる。
今の映像、何?
私の知らない記憶。
それともまた忘れているだけ?
「アリス。少しは落ち着きましたか?」
ふわり、と笑うクローバーさん。
不思議。彼の暖かさ、匂い、声…全てが私を落ち着かせてくれる。
「アリス。ここは記憶の森…
貴女の欲する記憶もあれば
貴女以外の者の記憶もある。
知らないほうが良い記憶が
溢れかえっているのです。」
今の記憶もそうなの?
でも、知らないほうが良い記憶なんて可笑しい。
自分の知らないところで誰かが傷付いているかもしれない
自分の知らないところで誰かが殺されているかもしれない
私のせいで。
「そんなの…可笑しいよ。」
いつだって私は守られていて
いつだって私は無力。
大切な人を守るどころか
傷付けてばかりで
いつだって私は…
「アリス。記憶に呑まれてはなりませんよ?」
「えっ…?」
「今の貴女には正確な記憶は僅かしかない。
つまり、今、他の者の記憶を知ればそれを貴女は自分の記憶だと勘違いしてしまう。
アリス、自分をしっかりと認識しなさい。
そうしなければ記憶だけでなく森に呑まれてしまいますよ。」