─ Alice ?─
『あの子はこの国を救えない。』
ド ク ン 。
心臓が止まったかと思った。
私には、この国を救うことはできない?
黒兎さんが、そう言ったの?
黒兎お兄さんが…私、を否定した、ってこと?
「そ、そんなこと…あるわけない。違う、違う、わよ…く、黒兎さんがそんなことっ…」
悔しかった。
苦しかった。
そして何より
悲しかった。
記憶の中の、黒兎お兄さんはとても優しくて
私のことをいつも大切にしてくれて
私を、ありすのことを家族だと受け入れてくれて…
「ち、ちがっ…う……お兄さ…」
涙が止まらない。
苦しさが止まらない。
「黒兎はアリスが元の国に帰るように仕向けたのです。
女王に捕まったのだって、黒兎なら「そのくらいにしなさいクローバー。」」
クローバーさんを睨みつけながら、スペードさんは言う。
私を優しく抱き締め、
「真実は時に残酷だ。」と囁いた。
「残酷…?また、帽子屋さんの時のように…?」
血だらけの、記憶を見なければいけないの?
赤い 赤い 血にまみれた
赤く塗られた私の記憶。
「赤は、血だけではないのです。アリス。」