─ Alice ?─
声が聞こえる。
女の子の笑い声。
無邪気にはしゃぐ女の子の声。
目を開けば記憶の森。
幼い私が走り回っている。
「アリス、あまり走り回ると転ぶよ。」
心配そうに見つめる黒兎さんがいた。
「あー!ちぇしゃがいる!!黒兎お兄さん黒兎お兄さんっ!ちぇしゃがいるー!!」
ちぇしゃ。
幼い私はチェシャ猫のことをちぇしゃと呼んでいた。
「おや、珍しい。何をしているんだい?チェシャ猫。」
「ちょっと用事。」
珍しく機嫌がよいチェシャ猫。
にんまり顔で黒兎さんを見やる。
「ご機嫌だね。何かいいことでもあったの?それともまた何か企んでいるの?」
ニコリ、と笑い幼い私を見る。
「なになにー?ありすに用事?黒兎お兄さんに用事?それともそれともクローバーさんに用事?なになになにー?」
チェシャ猫の尻尾に気をとられながらありすは質問を続ける。
「クローバーさんはお顔真っ赤だったからきっと病気だよー!
だから用事は今日は駄目だよ!
それにね、リーフ君がすっごくプンプンしてるの!ちぇしゃも怒られちゃうよ?」
これはクローバーさんやリーフ君に会った後の記憶。
最初からリーフ君は嫉妬してたのか…
「ふふふ♪そうだね、お顔真っ赤だったもんね。でもアリス、病気じゃないから安心してね?」
「黒兎。クローバーはどこにいるの?」
相変わらずのにんまり顔でチェシャ猫は問う。
尻尾をゆらゆらと揺らし、
ありすをチラチラと横目に見る。
「珍しいと思ったら…何を企んでいるの?チェシャ猫。」