─ Alice ?─
クローバーさんに用事。
何故それだけで何か企んでいることになるのか
私には分からない。
けれど
「さあ?
別に…ただ、クローバーにちょっと用事があるだけ。
黒兎、用事が済んだなら早く森から出て行った方がいいよ。
…アリスを守ってやるんだろ?」
にんまり顔が深まった瞬間だった。
「チェシャ猫…お前、何を…」
「じゃあね♪俺はちゃんと忠告したから。」
ひょい、と軽い身のこなしで
木々を飛び移っていくチェシャ猫。
「あっ!ばいばいちぇしゃ!」
笑顔で手を振るありすを見て
胸が痛くなった。
それと同時に
胸騒ぎがした。
「…アリス。先に湖に向かってて。行き方はわかるよね?」
「えー。黒兎お兄さんは?一緒じゃないの?」
納得しないありすの頭を黒兎さんは優しく撫でる。
「ちょっと用事思い出しちゃった。すぐに僕も向かうから…出来るだけ早く、森を抜けるんだよ。」
優しく笑い、ぴょんぴょんと走り跳びながら奥へ進んでいく。
「クローバー…お願い気づいて。」
焦ったように森を進んでいく黒兎さん。
いつも優しくて、落ち着いているのに
今、目の前の彼は必死に走り、今から起こることを恐れているよう。
遠ざかる黒兎さんのすぐ近くでキラリと光る 猫 の 瞳 。
「森の中にはクローバーとリーフ。
そして黒兎…
さあ、誰が悪者になる?」
シュッ
猫 は 笑 っ た。
森に炎を落として。