─ Alice ?─



「……自分を認識?」


「そうです。自分が何なのか、しっかりと意志を持つのです。」




「そんなのとっくにしているわ!」

思わず声を荒げる。
クローバーさんは驚き、スペードさんは無表情で私を見ていた。


「私はありす。


ただのちっぽけな人間よ。
何にもできない無力な人間。
それ以外の何者でもないわ。」」


そうよ、私はただの人間。



この国の住人みたいに特別な力なんてない。
そんなちっぽけな人間に何ができるっていうの?



「…黒兎さんの言うとおりかもしれない。」



──あの子にこの国は救えない。──




わからない。わからないの。



何をすればいいのか


何を信じればいいのか



もう、わからないのよ。




「もう……もう沢山よ!!」



ダンッ


「アリス!!!!!」



クローバーさんたちを突き飛ばし森を走り抜ける。


後ろからクローバーさんの叫び声が響く。


「もう、沢山よ……!!」




夢中で走った。


何も考えなくていいから。

ただ、ひたすら走った。


だから気づかなかった。




狂意はすぐ側にあることに。
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