─ Alice ?─
知っている。
何故だか分からない。
けれど聞いたことがある。
『追ってしまいました、ね。』
心臓が止まった、気がした。
『フフ、フフフ♪ はは、はははははははは♪アリス、貴女は単純すぎる。私の涙を見たから、私が助けてと言ったから、きっと貴女はそう言うのでしょう?なんて単純で騙しやすい!!!涙を見たら同情をしたのでしょう?助けを求められたら何かできるかも、と勘違いしたのでしょう?なんて馬鹿で可哀相な子なんでしょう!!』
顔を歪まし、声に出して笑い、私を侮辱し続ける。
これが、シロウサギさんの本性?
私への、本当の気持ち?
『全く…成長していない。』
はは、と乾いた笑いを零し
林檎を一つ、掴みとる。
『アリス。貴女は今、この林檎と同じです。私の手の内にある。私が殺そうと思えば…』
グシャ
『簡単に、殺せますよ?』
ぐしゃぐしゃになった林檎を舐めるシロウサギさんの姿は恐ろしい以外の何者でもない。
逃げ出す、なんてできない。
どうして私は同じ過ちを──
『今さら後悔ですか?遅いんですよ。』
顎を掴み、無理矢理目を合わせる。
『本当、貴女はトロイですね。この顔、ぐしゃぐしゃに握り潰してあげましょうか?』