─ Alice ?─
高鳴る気持ちを抑え、僕はある人物の所へ向かった。
僕のアリスを傷付けた張本人、チェシャ猫の下へ。
「根は良い奴なんだけどなあ…。」
チェシャ猫は気まぐれな奴。ふらりと近寄ってきてはふらりと遠ざかる。
好いているかと思えば残酷に切り刻む。
よく分からないんだよね。
「チェシャー。チェシャ猫ー。いるんでしょう?出てきてよー。」
チェシャ猫の好きな秋桜畑。正確に言えばアリスの好きな秋桜畑なんだけど。
僕が「アリスは秋桜みたいだよね。」と言ってから此処でよく見かけるようになった。
よっぽどアリスが好きなんだね。
キョロキョロと辺りを見回すけれど、チェシャ猫の姿はない。
姿はないけれど
気配はする。
そして 聞こえる。荒れ狂った鼓動の音。
驚いているのかい?
捕まっているはずの僕がいるから。
焦っているのかい?
僕が君を捜してここに来たから。
それとも
恐れているのかい?
僕が君を殺しにキタカラ。