─ Alice ?─




高鳴る気持ちを抑え、僕はある人物の所へ向かった。


僕のアリスを傷付けた張本人、チェシャ猫の下へ。





「根は良い奴なんだけどなあ…。」



チェシャ猫は気まぐれな奴。ふらりと近寄ってきてはふらりと遠ざかる。


好いているかと思えば残酷に切り刻む。




よく分からないんだよね。




「チェシャー。チェシャ猫ー。いるんでしょう?出てきてよー。」




チェシャ猫の好きな秋桜畑。正確に言えばアリスの好きな秋桜畑なんだけど。



僕が「アリスは秋桜みたいだよね。」と言ってから此処でよく見かけるようになった。



よっぽどアリスが好きなんだね。




キョロキョロと辺りを見回すけれど、チェシャ猫の姿はない。




姿はないけれど







気配はする。





そして 聞こえる。荒れ狂った鼓動の音。




驚いているのかい?
捕まっているはずの僕がいるから。



焦っているのかい?
僕が君を捜してここに来たから。



それとも




恐れているのかい?















僕が君を殺しにキタカラ。
< 279 / 397 >

この作品をシェア

pagetop