─ Alice ?─
黒兎さんの瞳が、言葉が、痛いほど突き刺さる。
そう。私にアリスと名を与えてくれたのは黒兎さん。
母から捨てられ、居場所を無くしていた私に不思議の国という居場所を与えてくれたのも黒兎さん。
そして、こんなに醜い感情を与えたのも黒兎さん。
『アリス。君は僕に感謝しなくちゃいけないんだよ?なのに、君は僕を裏切ろうとしている。
ねえ、アリス。君にとっての一番は何だい?』
私にとっての一番。
『アリス。黒兎の誘いに乗ってはなりません。』
ピシャリ、と鋭く言い放つシロウサギさん。
黒兎さんを睨み付け、私の腕をキツく引っ張る。
『シロウサギ。僕に逆らわない方が良いと今話したばかりだよ?
そんなに死にたいなら、今この瞬間に
僕の中に戻してあげてもいいんだよ?』
中に“戻す”。
黒兎さんとシロウサギさんは元は同じ。だから戻すことなんてきっと容易いことなのだろう。
『戻したいのならば戻せば良い。だが、苦しむのは私だけではない。
貴方も、私と同じほど苦しむのですよ、黒兎。』