─ Alice ?─
『僕が、苦しむだって?』
黒兎さんの顔から笑顔が消えた。口元はみるみるうちに引きつり、視線は鋭くシロウサギさんを射抜く。
『そうです。
私は身体が消滅するのですから、苦しむのは承知の上です。
ですが、貴方から切り離された感情の私が戻されるのです。貴方が要らない、と切り捨てた感情がまた身体に入ってくる…
苦しむのは目に見えます。』
表情一つ変えず、ただ前を見て話すシロウサギさんの姿は
とても寂しそうだった。
その姿はまるで昔の自分を見ているようで
胸が痛んだ。
『…………。
確かに、君の言っていることは的を得ている。君を今、僕の中に戻した所で要らない感情が戻ってくるだけだしね。
分かった。止めるよ。戻すなんてことしないよ。』
にっこりと笑い、シロウサギさんに歩み寄る黒兎さん。
和解出来たんだ、と思った。きっと、私だけでなくシロウサギさんも。
微笑みながらシロウサギさんに抱擁をした黒兎さんの、
ち い さ な
小 さ な 呟 き が聞こえるまでは。