─ Alice ?─
何も無い。
真っ白な空間に私は立っていた。
『……アリス。此処は真実の間。君には今から【真実】を受け入れてもらうよ。』
ただ真っ直ぐに私を見つめ、うっすらと笑みを浮かべる黒兎さん。
「真実…―?」
『全て、そう…君が、この世界から帰った本当の理由を…教えてあげるよ。』
白が弾ける。迫り来るは黒の粒。赤い螺旋。
遠くでうずくまっている女の子。
「ちぇしゃー…ちぇしゃどこ行ったの?ありすをひとりにしないでよ…」
今にも泣きそうな顔でチェシャ猫を呼ぶ幼い女の子『ありす』は何かを抱えながらうずくまっている。
「ちぇしゃー…ありすはここだよ?うう…ヒック……嘘つき…ありすのそばにいるって言ったのに…」
抑えきれず大粒の涙を流しながらチェシャ猫を呼ぶありす。
「何泣いているんだよ、アリス。」
「ちぇしゃ!!!」
頭を乱暴に撫でながら、ありすを抱える。
乱暴だけど、そこがチェシャ猫っぽくて大好きだった。
「アリス…それ、なんだ?」
大切に抱いている【何か】。
でもありすは見せようとしなかった。
「秘密。チェシャには教えてあげない。」
くすり、と笑ったありすはまるでチェシャ猫を弄んでいるようだった。