─ Alice ?─
「ねえ、ちぇしゃ。どうして黒兎お兄さんは捕まったの?」
幼いありすは知らなかったのだろうか。
自分のせいで黒兎さんが捕まったことを。
「……悪いことをしたからだ。」
「悪いこと?悪いことって何?
【アリス】を独り占めしようとしたこと?」
幼い女の子がする表情ではなかった。
まるで『私が欲しいのでしょう?』と言っているような顔付きだった。
「…!?」
「ちぇしゃ。ありすはね、知っているんだよ。ありすが特別ってことも、みーんなありすに夢中ってことも!!だからありすは『アリス。それじゃあアリス失格だ。自惚れありすはアリスじゃない。』
突然聞こえた男の声。
すっ、と心に浸透するような不思議な声だった。
『皆、君のことは大好きだよ。だけど、自惚れちゃいけない。
皆のことを大切に思い、この国を大切にしてくれなくては…君は【アリス剥奪】だよ?』
アリス剥奪。聞いたことのあるフレーズに嫌な汗が伝う。
そして声の主は恐らくありすの腕の中の【何か】。
「いっいやだ!!ありすはありすだもん!!元の世界には戻りたくないっ…あっ…アリスでいたいの!!!」