─ Alice ?─
確かに聞こえた鈴の音。
チェシャ猫が付けていた首輪の鈴の音。
うっすらと浮かび上がるシルエットに目を凝らすと、それはチェシャ猫ではなく、ただの木の陰だった。
「あ、そうか…首輪はもう…」
狂ってしまったチェシャ猫は自ら首輪を引きちぎってしまった。
鈴の音がするはずなんてないのに…
「 チェシャ猫…――」
何でかな。こんなにもチェシャ猫が気にかかる。
元気にしてるのかな。
まだ、狂ったままなんだよね。
こんなこと考えてる余裕ないはずなのに、頭の中はチェシャ猫のことばかりだった。
ゴーン ゴーン !
突然鳴り響く鐘の音。
この音、聞いたことがある。
たしか、帽子屋さんが見せた過去のアリスが白兎を選んだときに…――
そこまで思い出し、はっとした。
私、私…――――
「今回のアリスは、チェシャ猫を選んだ。」