─ Alice ?─
「アリス、聞いてるか?」
「…え?あ、ごめん。ボーっとしてた。」
私はいつものようにチェシャ猫と秋桜(コスモス)畑を歩いていた。
「アリスはいつもボーっとしてるだろ。」
「失礼ね。チェシャ猫と一緒にしないでよ。」
たわいのない会話をしながら、名前すらない国の秋桜畑を歩いていた。
いつからチェシャ猫とこうしているだろう。それすら分からないけれど。
「ねえチェシャ猫。貴方とこうして過ごしてどの位経つかしら?」
「最初から。」
ぶっきらぼうにチェシャ猫は言った。けれど答えになっていない。
「最初からって…どの位かって聞いてるのよ?」
「この国が出来て、最初からだよ。」
「じゃあこの国が出来てからどの位経つの?」
ぶっきらぼうなチェシャ猫が、少し顔を強ばらせたのが分かった。
何か隠している。知りたい。けれど、私の中で何かが邪魔をする。
「………アリスを独占して1年。それ以上は勘弁してくれ。」
独占?独占って…この国にはチェシャ猫しかいないんだから当たり前じゃない。
あれ?
私…1年しかこの国にいないの?
私、この1年以外どこで生きてきたの?