─ Alice ?─



赤い薔薇は咲き乱れる。


美しく 魅惑的で



なのに何故か胸を締め付ける




何故これほどまでに美しいのか


真っ赤な薔薇はみずみずしい赤をおびていて


滴る水滴さえも赤く






水滴 も 赤く て …… ?






「ひっ………やぁあああぁあ!!?」




薔薇から滴る真っ赤な雫。


さっきと同じだ。秋桜と同じ



赤く美しい なのに残酷で



私に知らしめるように垂れ落ちる血液を、ただただ見つめるしかなかった。




   ポ タ    ポ タ





── 紅い 薔薇 は


  何で 染まった か ─


頭に浮かび上がる誰かの言葉


低く、妖艶で 私を誘惑する声



甘い薔薇の香りが辺りに充満し、思考を遮ろうとする


この香り 誰の香りだった?

この声  誰の声だった?



浮かび上がるシルエット


紳士的で 美しい あの人



「……し…さ……ん…──」



零れた言葉。溢れる涙。


嗚呼、そうだった

この声 この香り あの姿







「帽子屋さん……!」
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