─ Alice ?─
「待って…待って!黒兎さん!!」
走っても走っても、追いつけない
息は上がり、足がついていかなくなる
「時計を…時間を…止めないでっ…誰にも必要とされないのなんて…もうっ…嫌なのに…──」
蘇ってくる 幼い頃の記憶 たち。
黒兎さんが来てくれたこと
元の世界へ帰されたこと
チェシャ猫が迎えに来てくれたこと
そして 血塗れた世界 森 人や動物
私を愛し 消えてゆく 住人
心が 身体が 壊れていく 。
「ありすじゃなくていい!!私を…ありすを必要としてくれなくてもいいの!!アリスを愛してくれるなら…アリスにもう一度させてっ……!!今度はっ…今度は裏切ったりしないからぁ!!」
必死だった。
自分の言っていることがまともじゃないことも分かっていた。
けれど、ありすとして必要とされないなら
もう、私はありすじゃなくていい
私が私でなくてもいい
時は止まったまま けれど
私の狂いは 確実に 進んでいった。